苦手意識の影響力(Koara)
突然ですが、みなさんは数学が得意ですか?
おそらく、数学を愛しているという方から、数字を見ただけで気分が悪くなるという方まで様々だと思います。
特に気分が悪くなってしまうという人は学校の定期テストなどは苦痛で仕方がなかったのではないでしょうか。
今回のお話は、そんな数学の点数を下げる原因になってしまうある理由についてお話します。(実は数学以外の話にも大いに応用できますので、何かしら苦手意識を持っているものがある人はご覧ください。)
女性は数学が不得意??
大学は文系と理系に分かれていますが、一般に理系は男性が多く、文系の特に文学部などは女性が多い印象です。もちろん、昔に比べれば理系に進む女性も増えてはいますが、それでも専攻によっては「クラスに女性が2、3人しかいない」ということもよくあるのではないかと思います。
ではどうしてここまで男女比が偏るのでしょうか?
もちろん文化的な背景や、そもそもの進学率の差など、原因はいろいろ考えられると思いますが、ここで取り上げたいのは「女性には数学が不得意な人が多いのではないか?」ということです。
実際、世間では数学について
「女性は男性より数学が不得意」
だと思われている節があります。この考え方がどこから出てきたのかはわかりません。本当に文系科目を好む女性のほうが多いのかもしれませんし、男性のほうが論理的だから理系科目に向いている、という意見もあるようです。(個人的には疑わしいですが笑)
今日ご紹介したいのは、この考えにまつわるとある実験です。
この実験はアメリカで行われたもので、アジア系アメリカ人の女性を対象にしています。まず、集団を三つのグループに分け、その後、それぞれに数学のテストを受けてもらいます。このテスト自体の内容は三つのグループで共通なのですが、事前に回答しているアンケートの質問が異なります。
一つ目のグループには「女性」であることを強く意識させるような質問を盛り込んでいます。例えば「女性の職業観」について問うなどですね。
二つ目のグループには「アジア人」であることを意識させる内容を入れます。これは「アジア人は数学が得意」というイメージを検証するためのものです。
そして最後のグループにはとくに「女性」も「アジア人」も意識させないような質問に答えてもらいます。
さて、では試験結果はどうなったと思いますか?
実は「アジア人を意識したグループ」が最も成績がよく、次いで「どちらも意識しなかったグループ」、最後に「女性を意識したグループ」という結果になりました。
気の持ちよう
この実験結果が意味しているのは
「思い込みを捨てることによって試験の結果が変わりうる」
ということです。
「自分は女だから数学はダメだろうな・・・」ではなく、「自分は昔から計算とかも遅くなかったし、普通にやればできるんじゃないかな?」と考えるだけで、成績が変わってくる可能性があります。
そしてこれは数学だけに限った話ではありません。
「日本人は英語が苦手」
「日本人は積極的に発言するのが苦手」
「僕はB型だから几帳面にはできない」
などなど、世の中にはこの手の苦手意識があふれています。
ですが、いったんそれらを忘れて、ポジティブな要因を考えてみることで、実際にパフォーマンスが変わるのです。
世の中、結局気の持ちようです。
少しずつでも「苦手意識」改革、してみませんか。
Koara
参考:Margaret Shih, Todd L. Pittinsky, Nalini Ambady, (1999)”Stereotype Susceptibility: Identity Salience and Shifts in Quantitative Performance”