存在否定の具体例(Koara)
今回は前回の記事に絡めて、最近みた映画の話をしたいと思います。
前回は「他人を嫌う理由に『みんながそう言っているから』という固定観念を使ってしまう」ことやそれが引き起こす弊害について書きました。
今回、それを踏まえて紹介したいのは2015年公開の『あん』という映画です。昨年末に視聴したのですが、いろいろと考えさせられました。前回の記事で書いた考え方をまとめられたのも、この作品によるところが大きいです。
ここでは、簡単なあらすじと私が考えさせられたシーンについてだけお伝えしますので、詳しい情報はホームページを参考にしてください。
この作品は、樹木希林さん演じる徳江さんというハンセン病の女性が、どら焼き屋の屋台で働き始めるところから始まります。アン作りの名人である徳江さんと屋台の雇われ店長は一緒にどら焼きを作り始め、お店は次第に繁盛しだします。しかし、徳江さんの病気のことがどこからか広まってしまい、客足も徐々に減っていき・・・、という展開です。
この中で、私が取り上げたいのは、徳江さんの病気のことを聞きつけたオーナーが徳江さんを解雇するよう店長に勧めるシーンです。
細かいセリフは覚えてませんが、この店長、決して直接的な言葉は口にしません。
「ハンセン病の人は困るから、首にしてほしい」
「お客さんに知られたら大変だ」
などとは言わないのです。ただあいまいに
「ハンセン病って移るらしいし・・・」
などと言うだけなのです。きちんと事実確認をしたわけでもないことを、「みんながそう言っているからそうなんだろう」という理由で告げているだけです。(ハンセン病は治療法が確立されている上に感染リスクは非常に低い病気です。)
これが前回の記事でお伝えした、相手に反論を許さずに存在否定をすることの具体例です。
あいまいな言い方は言う方からすれば楽ではありますが、言われる方からすると禁じ手のようなものです。
他人に何かを要求するときは、なるたけ自分なりの理由を見つけてからにしようと思わされた映画でした。
Koara